2022年改正プロバイダ責任制限法 対応 最終更新: 2026年10月9日

誹謗中傷の慰謝料相場【2026年版】民法の根拠と裁判例の認容額を解説

この記事の結論

誹謗中傷の慰謝料に公的な「相場表」はありません。民法709条・710条・723条の法的根拠と、裁判所の裁判例検索で確認できる実際の認容額を事件番号つきで解説します。金額は事案ごとに大きく異なります。

「誹謗中傷の慰謝料は結局いくらもらえるのか」——検索すると「名誉毀損10万〜100万円」のような相場表を目にしますが、こうした表の多くは出典が示されていません。慰謝料の金額は民法709条・710条に基づき、裁判所が事案ごとに個別に認定するものであり、弁護士報酬と同じく全国一律の公式な基準は存在しません。本記事では、法的根拠を条文で確認したうえで、裁判所が無料で公開している裁判例検索で実際に確認できる認容額を、裁判所名・判決日・事件番号つきで紹介します。

誹謗中傷の慰謝料に「相場表」がない理由

ネット上には「名誉毀損は個人10万〜100万円、法人50万〜300万円」といった一覧表がよく見られますが、これらの数字の出典を明示しているサイトはほとんどありません。実際には、慰謝料の金額について国や公的機関が公表した基準表は存在しません。

これは弁護士費用の考え方と似ています。弁護士報酬が2004年の自由化以降、事務所ごとに異なるのと同様に、慰謝料の金額も民法709条・710条に基づき、裁判所が事案ごとに個別に認定するものです。同じ「名誉毀損」というカテゴリーでも、投稿内容・拡散範囲・被害者に生じた実害の有無によって認容額は大きく異なります。

重要:本記事では、出典を確認できない相場表や倍率表は掲載していません。かわりに、裁判所が公開している実際の判決文を裁判所名・判決日・事件番号つきで紹介します。具体的な見通しは、証拠を持って弁護士に相談することをおすすめします。

慰謝料請求の法的根拠(民法709条・710条・723条)

誹謗中傷に対する慰謝料請求は、主に民法の次の条文が根拠になります。

条文見出し内容の要旨
民法709条 不法行為による損害賠償 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う
民法710条 財産以外の損害の賠償 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合、財産以外の損害(精神的苦痛など)についても賠償の責任を負う
民法723条 名誉毀損における原状回復 名誉を毀損した者に対し、裁判所は被害者の請求により、損害賠償に代えて、又はともに、名誉を回復するのに適当な処分(謝罪広告の掲載など)を命じることができる

「慰謝料」とは、この民法710条にいう精神的苦痛に対する賠償金のことを指します。刑事上の名誉毀損罪・侮辱罪(刑法230条・231条)とは別の手続きであり、刑事告訴をしなくても民事上の慰謝料請求は可能です。刑事告訴を検討している場合は名誉毀損で刑事告訴する方法をご覧ください。

慰謝料の金額に影響するとされる要素

裁判所が慰謝料の金額を認定する際、判決文では次のような事情が考慮の対象として言及されることが一般的です。ただし、「この事情があれば何倍」というような公表された計算式は存在しないため、本記事では倍率や加算額を数値化して示すことはしません。

考慮されうる事情内容
投稿の内容・態様 具体的な事実を摘示したか、表現がどの程度悪質か
公然性 不特定多数が閲覧できる状態であったか(民法上の不法行為の成否にも関わる)
拡散の範囲・期間 投稿が繰り返されたか、どの程度の期間・範囲に広がったか
被害者に生じた実害 社会生活・業務への具体的な影響があったかどうか
投稿者と被害者の関係・投稿の経緯 事実無根の情報であったか、投稿に至った背景事情

これらの事情がどのように評価されて金額につながるかは、次の実際の裁判例を確認するのが最も具体的です。

裁判所の裁判例検索で確認できる実際の認容額

裁判所は、判決の一部を裁判例検索で無料公開しています。ここでは、誹謗中傷(名誉毀損等)に関する慰謝料が問題となった実際の判決を2件、事件番号つきで紹介します。いずれも当事者名は判決文中でアルファベット等に置き換えられています。

裁判所・判決日事件番号認容額事案の概要
福岡地方裁判所
令和4年3月18日
平成31年(ワ)第1170号 主たる投稿者:原告個人に22万円・原告会社に22万円
他の共同被告4名:それぞれ原告個人に16万5000円・原告会社に16万5000円
インターネット上の電子掲示板に、実際に起きた高速道路上のあおり運転事件の被疑者と原告が同姓であったことから、被疑者が原告の子であり原告が経営する会社に勤務しているという虚偽の情報を複数人が投稿。原告個人・原告が代表を務める会社の双方が名誉・信用を毀損されたとして提訴(原告側の請求額は被告ごとに各55万円)。
大阪地方裁判所(第一審)
令和7年10月24日
令和6年(ワ)第4903号 55万円 SNS(X、旧Twitter)上での一連の投稿により名誉を毀損され、プライバシー権及び肖像権を侵害されたと主張し、民法709条に基づき慰謝料等550万円を求めた事案。
大阪高等裁判所第2民事部(控訴審・同一事案)
令和8年7月29日
令和7年(ネ)第2273号・令和8年(ネ)第676号 88万円
(原判決を変更)
上記大阪地方裁判所判決に対する控訴審。原判決(55万円)が見直され、控訴審では88万円の支払が命じられた。

この2件から分かること:同じ「名誉毀損」でも認容額は16万円台〜88万円まで幅があり、原告側の請求額(各事案で55万〜550万円)よりも大きく減額されるのが通常です。さらに、同一の事案でも第一審(55万円)と控訴審(88万円)で金額が変わっており、金額は事案ごと、審級ごとに大きく異なります。本記事の数字を「相場」として一般化することはできません。

各判決の全文は裁判所が公開しているPDFで確認できます。福岡地方裁判所 平成31年(ワ)第1170号 判決全文(PDF)、大阪地方裁判所 令和6年(ワ)第4903号 判決全文(PDF)、大阪高等裁判所 令和7年(ネ)第2273号等 判決全文(PDF)。

個人の慰謝料と会社(法人)の信用毀損の違い

誹謗中傷の被害を受けるのは個人だけとは限りません。会社(法人)が対象になった投稿については、個人の慰謝料(民法710条の精神的苦痛に対する賠償)とは名目が異なり、信用毀損による損害賠償として整理されます。

比較項目個人会社(法人)
賠償の名目 慰謝料(精神的苦痛。民法710条) 信用毀損による損害賠償
法的根拠 民法709条・710条 民法709条(法人の名誉・信用も保護利益になりうる)
請求主体 被害を受けた本人 会社(代表者が会社を代理して請求)

福岡地方裁判所 令和4年3月18日判決の事案では、同一の投稿者に対して、原告個人への賠償と、原告が経営する会社への賠償がそれぞれ別に認められています(主たる投稿者につき、個人・会社ともに22万円)。このように、個人と会社の両方が同じ投稿の被害者として、それぞれ別に賠償を請求できる場合があります。金額が個人分と会社分で同額になるか異なるかは事案によります。

名誉毀損と侮辱で慰謝料は変わるか

刑法上、名誉毀損(刑法230条)は「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立し、侮辱(刑法231条)は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した」場合に成立するという違いがあります。民事の慰謝料についても、具体的な事実の摘示を伴わない抽象的な侮辱表現(「バカ」「無能」等)は、事実を摘示する名誉毀損に比べて認容額が低くなる傾向があるといわれますが、これも公的な基準として数値化されているわけではありません。

2022年7月7日施行の刑法改正(令和4年法律第67号)で侮辱罪の法定刑が引き上げられましたが、これは刑事罰の変更であり、民事の慰謝料の算定基準が同時に変わったことを示す公式な発表は確認できていません。刑事告訴の要件・手続きの詳細は名誉毀損で刑事告訴する方法で解説しています。

弁護士費用・開示請求費用との関係

投稿者が匿名の場合、慰謝料を請求する前提として、まず発信者情報開示請求で投稿者を特定する必要があります。弁護士報酬は個々の弁護士(法律事務所)が定めるものであり、統一された「相場」はありません。開示請求にかかる費用や期間についての一般的な考え方は、別記事で解説しています。

開示請求や訴訟にかかる費用と、見込める慰謝料の金額を比較して、費用倒れにならないかを事前に検討することが重要です。正確な費用の見積りは、依頼を検討している弁護士に直接ご確認ください。

慰謝料請求までの一般的な流れ

STEP 1

証拠保全

投稿のURL・投稿日時が分かる状態でスクリーンショットを保存します。投稿は削除される可能性があるため、早めに行うことが重要です。詳しくは証拠保全の方法を参照してください。

STEP 2

弁護士への相談

保全した証拠をもとに、名誉毀損等の成否や、開示請求・慰謝料請求の見通しについて相談します。

STEP 3

発信者情報開示請求(投稿者が匿名の場合)

プロバイダに対して投稿者の情報開示を求めます。詳しくは開示請求の費用・開示請求の期間を参照してください。

STEP 4

示談交渉または訴訟提起

投稿者が判明した後、示談交渉を行うか、応じない場合は損害賠償請求訴訟を提起します。

STEP 5

判決または和解

訴訟の場合は判決で認容額が確定します。示談の場合は当事者間の合意で金額が決まります。

かかる期間や費用は事案ごとに大きく異なるため、本記事では一律の月数・金額を記載していません。個別の見通しは弁護士にご確認ください。

自分で似た裁判例を調べる方法

裁判所は、判決の一部を裁判例検索で誰でも無料で検索できるようにしています。自分のケースに近い事案を確認したい場合は、次の手順で検索できます。

STEP 1

統合検索を開く

裁判所「裁判例検索」にアクセスし、「統合検索」タブを開きます。

STEP 2

キーワードを入力する

「全文検索」欄に「名誉毀損」等のキーワードを入力します。この欄はスペース区切りで入力した語のいずれかを含む結果を表示するため、語を1つだけ入れるとヒット件数を絞りやすくなります。

STEP 3

追加キーワードで絞り込む

「さらに、下記の語(追加入力)を含む結果だけ表示する」欄に「投稿」「SNS」など、自分のケースに近い語を追加すると、結果を絞り込めます。

STEP 4

判決全文(PDF)を確認する

検索結果一覧から「全文」のリンクを開くと、判決全文のPDFが表示されます。「主文」の欄に認容された金額が記載されています。

掲載されているのは公開された裁判例の一部であり、すべての判決が掲載されているわけではありません。また、判決文の内容を自分のケースに当てはめて判断するには法的な専門知識が必要です。具体的な見通しは弁護士にご相談ください。

出典・参考情報

慰謝料の金額は事案ごとの裁判所の個別判断であり、本記事で紹介した認容額は「相場」を示すものではありません。ご自身のケースでの見通しについては、弁護士に直接ご相談ください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律相談・法律事務にはあたりません。

よくある質問(FAQ)

Q.誹謗中傷の慰謝料の相場はいくらですか?

A.公的機関が公表している「相場表」は存在しません。弁護士報酬と同様、慰謝料の金額も統一基準がなく、投稿内容・拡散範囲・被害者への実害など個別の事情によって裁判所が事案ごとに判断します。参考までに、裁判所の裁判例検索で確認できる実例では、SNS(X、旧Twitter)への投稿が問題となった事案で第一審55万円・控訴審88万円(大阪高等裁判所 令和8年7月29日判決)、インターネット掲示板への虚偽投稿が問題となった事案で被告ごとに16万5000円〜22万円(福岡地方裁判所 令和4年3月18日判決)という認容額が確認できます。詳しくは裁判所の裁判例検索で確認できる実際の認容額をご覧ください。

Q.名誉毀損で慰謝料はいくらもらえますか?

A.名誉毀損(民法710条にいう名誉の侵害)に対する慰謝料も、法律や公的統計に定められた金額はありません。実際に投稿者を特定し訴訟に至った事案では、認容額が数万円台から100万円を超える例まで幅があります。金額は「公然性の程度」「事実摘示の内容」「拡散の範囲」「被害者に生じた実害の有無」などを踏まえて裁判所が個別に認定するため、まずは投稿のスクリーンショットなど証拠を保全したうえで弁護士に相談し、似た事案の裁判例を確認することが現実的な進め方です。

Q.慰謝料の金額はどのように決まるのですか?

A.裁判所は、民法709条(不法行為)・710条(財産以外の損害の賠償)に基づき、個別の事情を総合的に考慮して金額を認定します。判決文では「投稿の内容・態様」「公然性(不特定多数が閲覧できたか)」「拡散の範囲」「被害者の社会的地位や実害の有無」などが認定の理由として挙げられるのが一般的ですが、「◯◯があれば◯倍」というような公表された計算式はありません。本記事では出典が確認できない倍率や加算表は掲載していません。

Q.個人と会社(法人)で慰謝料は違いますか?

A.個人が受けるのは精神的苦痛に対する慰謝料(民法710条)、会社が受けるのは信用毀損による無形の損害賠償という整理になり、名目が異なります。福岡地方裁判所 令和4年3月18日判決の事案では、同一の投稿者に対して原告個人への賠償と原告が経営する会社への賠償がそれぞれ別に認められており、金額は同額(22万円)でしたが、事案によって個人分と会社分の金額が異なることもあります。

Q.名誉毀損と侮辱で慰謝料は違いますか?

A.名誉毀損(具体的な事実を摘示するもの)と侮辱(事実の摘示を伴わないもの)は刑法上は別の罪ですが(刑法230条・231条)、民事の慰謝料についても、事実の摘示を伴わない抽象的な侮辱表現は、名誉毀損に比べて認容額が低くなる傾向があるとされています。ただし、こちらも公表された基準があるわけではなく、事案ごとの判断です。刑事告訴を検討している場合は名誉毀損で刑事告訴する方法もあわせてご覧ください。

Q.慰謝料請求に弁護士は必要ですか?

A.投稿者が匿名の場合、慰謝料を請求する前提として発信者情報開示請求で投稿者を特定する必要があり、この手続きには法律の専門知識が必要です。開示請求にかかる費用については開示請求の費用、期間については開示請求の期間の記事で解説しています。弁護士報酬は事務所ごとに異なり、本記事では出典のない金額を断定的には記載していません。正確な費用は依頼予定の弁護士に直接お問い合わせください。

Q.自分のケースに近い判例を自分で調べることはできますか?

A.はい、裁判所が無料で公開している裁判例検索で、キーワードや裁判年月日を指定して誰でも検索できます。調べ方の具体例は自分で似た裁判例を調べる方法で解説しています。ただし、掲載されているのは公開された裁判例の一部であり、すべての判決が掲載されているわけではない点に注意してください。

Q.慰謝料の請求はどこまで無料でできますか?

A.投稿のスクリーンショットなど証拠を保全すること自体には費用がかかりません。本サービスの無料AI診断では、投稿内容から法的な問題の有無や次に取るべきステップの見通しを無料で確認できます(弁護士による法的助言ではありません)。実際に投稿者を特定し慰謝料を請求する段階になれば、開示請求や訴訟の費用が必要になります。

まず無料で状況を診断しませんか?

AIが投稿内容から名誉毀損等の成立可能性と次のステップを無料でチェックします。

無料AI診断を試す(3分)

※弁護士資格による法的助言ではありません。詳しくは弁護士にご相談ください。

無料でAIチェックする

保存するにはログインが必要です

記録・お気に入り・履歴はログイン後に保存できます。