2022年改正プロバイダ責任制限法 対応 最終更新: 2026年10月9日

開示請求された・意見照会書が届いたときの対応【2026年版】同意しない場合の判断基準

この記事の結論

開示請求の意見照会書が届いた方へ。情報流通プラットフォーム対処法6条に基づく意見照会の仕組み、同意しない場合の判断基準、回答期限の目安、開示命令事件の流れを条文に沿って解説。法テラス・弁護士会の相談窓口も案内します。

「開示請求された」「意見照会書が届いた」というとき、まず知っておきたいのは、これは訴訟の呼び出しではなく、発信者情報開示に係る意見照会という法律上の手続きだということです。本記事では、情報流通プラットフォーム対処法(旧・プロバイダ責任制限法)の条文と、総務省・業界団体(情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会)が公表している資料に基づき、意見照会書の法的な位置づけ・回答しない場合の扱い・同意しない場合の判断基準・開示命令事件に進んだ場合の流れ・実在する相談窓口までを解説します。示談金や弁護士費用の「相場」について、公的な出典で確認できない金額の断定はしていません。

意見照会書が届いたときの対応フロー

特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(情報流通プラットフォーム対処法。旧称・プロバイダ責任制限法)6条1項は、開示関係役務提供者(プロバイダやSNS事業者など)に対し、発信者と連絡できない場合その他特別の事情がある場合を除き、発信者情報の開示請求に応じるかどうかについて発信者本人の意見を聴かなければならないと定めています。あなたに届いた意見照会書は、この義務に基づくものです。詳しい用語の意味は用語辞典「意見照会」もあわせて参照してください。

STEP 1

意見照会書の内容を確認する

誰から(どのプロバイダ・SNS事業者から)、どの投稿について、どのような理由で開示請求があったのかを確認します。回答期限が記載されているので、あわせて確認してください。

STEP 2

相談窓口や弁護士に相談する

同意するか同意しないかの判断には、投稿内容が権利侵害に当たるかどうかの評価が必要です。相談窓口を早めに確認し、回答期限に余裕を持って相談してください。

STEP 3

同意するか同意しないかを検討する

それぞれの法的な意味は同意する・同意しないで解説しています。

STEP 4

回答書を作成し、期限内に返送する

不同意の場合は、権利侵害に当たらないと考える理由を具体的に記載します。書式は意見照会書に同封されていることが一般的です。

STEP 5

回答後の流れを確認する

同意した場合は開示されます。不同意とした場合の判断のされ方は同意する・同意しない、裁判所が関与する場合の流れは発信者情報開示命令事件の流れを参照してください。

重要:意見照会書に回答しないまま期限を過ぎると、開示関係役務提供者は請求者が提出した資料をもとに開示するかどうかを判断します。詳しくは意見照会書に回答しない・期限を過ぎた場合どうなるかをご覧ください。「対応しない」という選択肢自体はありますが、それによって開示を防げるとは限らない点に注意してください。

意見照会書とは — 法律上の根拠と記載内容

意見照会書は、発信者情報開示請求を受けた開示関係役務提供者(法5条1項の特定電気通信役務提供者および同条2項の関連電気通信役務提供者。実務上はSNS事業者・プロバイダ等)が、あなた(発信者)に送付する書面です。法的根拠は情報流通プラットフォーム対処法6条1項です。

項目内容根拠
送り主 あなたが投稿に利用したSNS事業者や、契約しているプロバイダ(開示関係役務提供者) 同法6条1項
聴取される内容 開示請求に応じるべきかどうかについての意見(応じるべきでないという意見の場合は、その理由も含む) 同法6条1項
意見照会が行われない場合 発信者と連絡できない場合、その他特別の事情がある場合 同法6条1項
回答後の通知 不同意の意見を述べていた発信者が発信者情報開示命令を受けた場合、開示関係役務提供者は遅滞なくその旨を発信者に通知しなければならない(通知が困難な場合を除く) 同法6条2項
発信者情報の定義 氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるもの 同法2条10号

回答期限は、多くの場合およそ2週間です。情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会「発信者情報開示関係ガイドライン(第10版)」は、開示関係役務提供者は発信者から回答(開示に同意しない旨の回答を含む)を得た場合、または「一定期間(二週間)経過しても回答がない場合」には、請求者の提出資料等をもとに「権利が侵害されたことが明らか」(同法5条1項1号)かどうかを判断する、と説明しています。意見照会書に記載された実際の期限は、必ずご自身で確認してください。

意見照会書に回答しない・期限を過ぎた場合どうなるか

「意見照会書が届いた」状態で最も避けたいのは、判断がつかないまま何もせず放置することです。前述のガイドラインが示すとおり、回答しないまま一定期間(目安として2週間)が経過すると、開示関係役務提供者は請求者から提出された資料等をもとに、権利侵害が明らかかどうかを自ら判断します。つまり、回答しないことは、あなたの言い分がまったく考慮されないまま判断が進んでしまう可能性があるということです。

期限を過ぎてしまった場合でも、開示するかどうかの判断がまだであれば、事情を伝える余地が残っていることがあります。「もう遅い」と決めつけず、早めに相談窓口に連絡してください。

なお、開示関係役務提供者が開示請求に応じなかったことで請求者に損害が生じても、故意または重大な過失がある場合でなければ、開示関係役務提供者は賠償の責めを負わないとされています(同法6条4項)。この規定自体は開示関係役務提供者の責任に関するものですが、開示関係役務提供者が意見照会や開示の判断を慎重に行う制度的な背景として押さえておくとよいでしょう。

同意する・同意しない — それぞれの法的な意味

意見照会書への回答は「開示に同意する」「開示に同意しない」のいずれかです。「同意しない」を選んだ場合に何が起きるかを、正確に理解しておくことが重要です。

回答開示関係役務提供者の対応最終的にどうなるか
同意する 発信者情報を開示できる状態になる 開示される
同意しない(理由を付して回答) 請求者の提出資料と、あなたが示した理由をもとに「権利侵害の明白性」を判断する 権利侵害が明らかでないと判断されれば開示されない。ただし請求者が発信者情報開示命令を申し立て、裁判所が要件を満たすと判断すれば開示される
回答なし(期限徒過) 請求者の提出資料のみをもとに判断する(回答しない場合参照) 同上

「同意しない」を選ぶ場合の鍵は、投稿内容が権利侵害に当たらないと考える具体的な理由を示せるかどうかです。例えば、投稿が事実の摘示を伴わない意見・論評の範囲にとどまる場合や、摘示した事実が真実であり公益目的だったといえる場合などは、名誉毀損罪の成立要件を満たさない可能性があります。名誉毀損・侮辱の成立要件と違法性阻却事由は名誉毀損で刑事告訴する方法で条文に沿って解説しています。慰謝料の考え方は誹謗中傷の慰謝料を参照してください。

投稿内容の評価は個別の事案ごとに異なり、自己判断でのミスは不利な結果につながりかねません。判断に迷う場合は、回答期限までに法テラスや弁護士会の相談窓口に相談することを検討してください。

発信者情報開示命令事件の流れ

意見照会に対してあなたが同意しないと回答しても、請求者が裁判所に発信者情報開示命令を申し立て、裁判所が要件を満たすと判断すれば、最終的に開示されることがあります。この手続きは訴訟事件ではなく非訟事件として進められ、あなたは「相手方」の立場になります。

手続き内容根拠条文
発信者情報開示命令 裁判所が、決定で発信者情報の開示を命じることができる制度 同法8条
申立書の写しの送付 申立てが不適法または理由がないことが明らかな場合を除き、裁判所はあなた(相手方)に申立書の写しを送付する 同法11条1項
陳述の聴取 裁判所は決定をする前に当事者の陳述を聴かなければならない(申立てを却下する場合を除く) 同法11条3項
提供命令 発信者を特定できなくなることを防ぐため、裁判所が他の開示関係役務提供者の氏名等情報の提供等を命じることができる制度 同法15条
決定への異議 決定に不服がある当事者は、告知を受けた日から1か月の不変期間内に異議の訴えを提起できる 同法14条1項
記録の閲覧 事件の記録を閲覧・謄写できるのは当事者と、利害関係を疎明した第三者に限られる 同法12条1項

申立ての管轄は、原則として相手方(あなた)の住所地を管轄する地方裁判所です(同法9条・10条)。情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会が公表している別冊「発信者情報開示命令事件に関する対応手引き」でも、コンテンツプロバイダ(SNS事業者等)に対する開示命令の申立てから、経由プロバイダの特定・開示へと段階を踏む手続きの流れが示されています。裁判所からあなた宛てに申立書の写しが届いた場合は、意見照会の段階よりも手続きが進んでいることを意味するため、早めに弁護士へ相談してください。

不同意の回答をする場合に気をつけたいこと

「同意しない」と回答することを選んだ場合、回答の内容がその後の判断を左右します。次の点を意識してください。

  • 理由を具体的に書く:「身に覚えがない」とだけ書くのではなく、なぜ権利侵害に当たらないと考えるのか(意見・論評の範囲である、事実と異なる、投稿者本人ではない、など)を具体的に記載します。
  • 家族・同居人の投稿である可能性を確認する:契約者本人ではなく家族や同居人が投稿した場合も、意見照会の対象になることがあります。心当たりがあれば、その事情を回答に含めるかどうかを弁護士に相談してください。
  • 削除する前に証拠を保全する:投稿を削除する前に、日時やURLがわかる形でスクリーンショット等を保存しておくと、後の相談や交渉で役立ちます。保全方法は証拠保全の方法を参照してください。
  • 期限に余裕を持って動く:弁護士への相談や回答書の作成には時間がかかります。意見照会書が届いたら、回答期限をすぐに確認し、早めに動いてください。

意見照会書が届いたあとに避けたいこと

  • 放置する:回答しない場合で説明したとおり、放置しても開示を防げるとは限りません。
  • 請求者に直接連絡する:意見照会書には通常、請求者本人の連絡先は記載されていません。直接連絡を試みることは、新たなトラブルの原因になり得ます。対応は相談窓口や弁護士を通じて行ってください。
  • 証拠を保全せずに投稿をすぐ削除する:削除するかどうかの判断自体は自由ですが、削除の前に証拠を保全しておかないと、後の説明や相談で不利になることがあります。証拠保全の方法を確認してから対応することを検討してください。
  • SNSで経緯を発信する:意見照会を受けたこと自体や投稿内容についてSNSで言及すると、新たな投稿として扱われ、状況を複雑にする可能性があります。

ここに挙げた対応はいずれも一般的な注意点であり、個別の事案でどう対応すべきかは投稿内容や状況によって異なります。判断に迷う場合は自己判断せず、弁護士や相談窓口に確認してください。

開示された後に起こりうること

発信者情報が開示された後の展開は、投稿内容や請求者の対応によって異なります。次のような可能性があります。

  • 示談交渉に進む:請求者側の弁護士等から連絡があり、示談交渉に進むことがあります。示談金の金額は事案ごとに大きく異なり、公表された相場はありません。
  • 民事訴訟(損害賠償請求)に進む:示談がまとまらない場合、損害賠償請求訴訟に発展することがあります。慰謝料の考え方は誹謗中傷の慰謝料で解説しています。
  • 刑事告訴に発展する:投稿内容が名誉毀損罪・侮辱罪等の構成要件を満たすと判断されれば、刑事告訴に発展することがあります。要件・期限は名誉毀損で刑事告訴する方法を参照してください。
  • 特に連絡がないまま経過する:開示後に請求者から特段の連絡がないケースもあります。ただし、不法行為による損害賠償請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年、または不法行為の時から20年で時効消滅するとされており(民法724条)、開示によって請求者があなたを知った時点からこの期間が経過するまでは、請求される可能性が残ります。

なお、情報流通プラットフォーム対処法7条は、発信者情報の開示を受けた者に対し、その情報をみだりに用いて発信者の名誉または生活の平穏を不当に害してはならないと定めています。開示によってあなたの氏名・住所等が請求者に知られたとしても、請求者側にもこの法律上の制約がある点は知っておいてよいでしょう。

開示請求を行う側(請求者側)がどの程度の費用や手続きを経て開示にたどり着いているかは開示請求にかかる費用で解説しています。あわせて参考にしてください。

弁護士費用の考え方

意見照会書への回答や、その後の示談交渉を弁護士に依頼する場合の費用について、「◯万円が相場」といった断定はできません。日本弁護士連合会は、弁護士の費用は個々の弁護士がその基準を定めるものであり、「標準小売価格というようなものはありません」と説明しています。2004年4月の弁護士報酬規定の廃止(自由化)以降、弁護士費用は各法律事務所が個別に定めているためです。

正確な費用は、相談時に見積りと内訳(着手金・報酬金の有無や条件など)を書面で必ず確認してください。なお、開示請求を行う側(請求者側)の費用の考え方は開示請求にかかる費用で解説しています。

収入等の要件を満たす場合は、法テラスの民事法律扶助制度により弁護士費用の立替を利用できることがあります。制度の詳細・要件は法テラス公式サイトで確認してください。

相談窓口

意見照会書への対応や、その後の展開に不安がある場合は、次のような公的な相談窓口があります。弁護士会紹介の制度を利用して、地域の弁護士会から弁護士を紹介してもらうことも可能です。

窓口内容連絡先
法テラス・サポートダイヤル 法的トラブル全般の相談窓口。弁護士・司法書士との法律相談の予約も可能。収入等の要件を満たせば弁護士費用の立替制度も利用できる 0570-078374(平日9時から21時、土曜9時から17時)。法テラス公式サイト
全国の弁護士会の法律相談センター 日本弁護士連合会が案内する、全国の弁護士会が運営する法律相談センターの一覧 日本弁護士連合会「全国の弁護士会の法律相談センター」

電話受付時間や案内内容は変更される場合があります。利用前に各公式サイトで最新情報を確認してください。

出典・参考情報

弁護士費用・示談金は事務所や事案により異なります。日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)とは」は、弁護士の費用は個々の弁護士が基準を定めるものであり標準小売価格に相当するものはないと説明しています。本記事はこの枠組みに基づき、公的な出典で確認できない金額の断定を避けて解説しています。正確な費用・見通しは弁護士に直接お問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q.開示請求されたら必ず意見照会書が届きますか?

A.いいえ、必ず届くとは限りません。情報流通プラットフォーム対処法6条1項は、開示関係役務提供者(プロバイダやSNS事業者)が発信者と連絡できない場合や、その他特別の事情がある場合には、意見照会を行わなくてよいと定めています。多くのケースでは意見照会書が届きますが、届かないまま開示の判断が行われることもあります。

Q.意見照会書に回答しないとどうなりますか?

A.回答しないまま一定期間(目安として2週間)が経過すると、開示関係役務提供者は請求者から提出された資料等をもとに、権利侵害が明らかかどうかを自ら判断します。あなたの言い分がまったく考慮されないまま判断が進む可能性があるため、放置は避けてください。詳しくは意見照会書に回答しない・期限を過ぎた場合どうなるかで解説しています。

Q.「同意しない」と回答すれば開示されませんか?

A.必ずしもそうとは限りません。同意しないと回答しても、開示関係役務提供者が「権利が侵害されたことが明らか」と判断すれば開示されることがあります。また、請求者が裁判所に発信者情報開示命令を申し立て、裁判所が要件を満たすと判断すれば、その決定に基づいて開示されます(情報流通プラットフォーム対処法8条)。

Q.意見照会書はどこから届きますか?

A.あなたが投稿に利用したSNS事業者や、契約しているインターネットプロバイダなど、法律上「開示関係役務提供者」と呼ばれる事業者から届きます(同法6条1項)。開示請求を行った本人や、その代理人の弁護士から直接届くものではありません。

Q.意見照会書の回答期限はどれくらいですか?

A.意見照会書に記載された期限を必ず確認してください。情報流通プラットフォーム対処法ガイドライン等検討協議会「発信者情報開示関係ガイドライン」は、発信者から回答を得た場合、または「一定期間(二週間)経過しても回答がない場合」に開示関係役務提供者が判断を進める旨を説明しており、2週間程度が一つの目安になります。

Q.弁護士に相談する費用はいくらかかりますか?

A.弁護士報酬は2004年4月の自由化以降、各法律事務所が個別に定めており、日本弁護士連合会も「標準小売価格というようなものはありません」と説明しています。公表された相場はないため、正確な費用は相談時に見積りと内訳を確認してください。収入等の要件を満たす場合は、法テラスの民事法律扶助制度により弁護士費用の立替を利用できることがあります。

Q.開示されたら必ず民事訴訟や刑事告訴になりますか?

A.必ずそうなるとは限りません。開示後に示談交渉で解決するケース、民事訴訟(損害賠償請求)に進むケース、投稿内容が名誉毀損罪・侮辱罪等の要件を満たすと判断されて刑事告訴に発展するケース、特に連絡がないまま経過するケースなど、事案によって展開は異なります。刑事告訴の要件は名誉毀損で刑事告訴する方法で解説しています。

Q.意見照会書が届いたことは周囲に知られますか?

A.意見照会書自体は契約者の住所宛てに郵送で届くのが一般的です。発信者情報開示命令事件の記録は、当事者と利害関係を疎明した第三者に限り閲覧・謄写が認められており(情報流通プラットフォーム対処法12条1項)、誰でも自由に閲覧できるものではありません。ただし、郵便物の管理状況によっては同居する家族に知られる可能性はあります。

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