ネット誹謗中傷の対策まとめ|削除請求・開示請求・刑事告訴と相談窓口【2026年版】
この記事の結論
ネット誹謗中傷への対策を、削除請求・発信者情報開示命令・損害賠償請求・刑事告訴の4つの法的手段と、みんなの人権110番など公的相談窓口の連絡先まで整理。条文と公式情報のみに基づき、根拠のない費用相場は掲載していません。
ネット上の誹謗中傷に悩んでいる方へ。本記事では証拠保全の実務、削除請求・発信者情報開示命令・損害賠償請求・刑事告訴という4つの法的手段、主要プラットフォームの通報窓口、実在する公的な相談窓口までを、条文と公式情報だけに基づいて整理しています。弁護士費用は事務所ごとに異なるため、本記事では根拠のない相場は示していません。各手段の詳しい費用・期間・成功率は専門記事へのリンクからご確認ください。
最初にやるべきこと 証拠保全の実務
誹謗中傷の投稿を見つけたら、何よりも先に証拠を保全してください。投稿は発信者や運営側の判断でいつ削除されるか分かりません。証拠が残っていなければ、削除請求も発信者情報の開示請求も進められなくなります。
| やること | 具体的な方法 | 注意点 |
|---|---|---|
| スクリーンショットの保存 | ブラウザのURLバーごと画面全体をキャプチャする | URLバーが写っていないと投稿の場所を証明しにくくなる |
| URL・投稿日時の記録 | 投稿URL、投稿日時、投稿者のアカウント名をメモに残す | 投稿者のプロフィールページもあわせて保存する |
| 前後の文脈の保全 | 該当投稿だけでなく、スレッドやリプライの流れも保存する | 意見なのか事実の摘示なのかの判断材料になる |
重要:証拠保全は発見後できるだけ早く行ってください。投稿が削除されたりアカウントが凍結されたりすると、証拠を取り直すことができなくなる場合があります。証拠保全の具体的な方法は、証拠保全の方法を解説した記事でも詳しく紹介しています。
誹謗中傷に使える4つの法的手段
誹謗中傷への対応は、大きく分けて4つの法的手段があります。すべてを行う必要はなく、被害の内容や目的に応じてどこまで進めるかを判断します。金額や期間は事案によって大きく異なるため、この一覧では目的と法的根拠を中心に整理しています。
| 手段 | 目的 | 法的根拠 | 手続きの性質 |
|---|---|---|---|
| 削除請求 | 投稿の拡散や閲覧を止める | 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(旧プロバイダ責任制限法)3条 | プラットフォームへの報告・申出。応じない場合は裁判所への申立ても検討 |
| 発信者情報開示命令 | 投稿者を特定する | 同法5条・8条・15条・16条 | 裁判所への申立てによる非訟手続 |
| 損害賠償請求 | 精神的・経済的な損害を金銭で回復する | 民法709条(不法行為)・710条(財産以外の損害の賠償) | 投稿者との示談交渉、または民事訴訟 |
| 刑事告訴 | 加害者の刑事処罰を求める | 刑法230条(名誉毀損罪)・231条(侮辱罪) | 告訴状の提出(親告罪、刑法232条)。捜査機関の判断で捜査が行われる |
どこまで進めるかを考えるときは、「投稿が今も閲覧できるか(削除の要否)」「同じ相手からの被害が繰り返されそうか、金銭的な回復や処罰を求めたいか(開示・損害賠償・告訴の要否)」を分けて考えると整理しやすくなります。削除だけで十分なケースもあれば、証拠保全のうえで開示請求まで進めるケースもあり、判断に迷う場合は弁護士や下記の公的相談窓口に相談することをおすすめします。各手段の詳しい費用・期間・成功率の傾向は「関連記事ガイド」からご覧いただけます。
削除請求 投稿を止める
削除請求は、被害の拡大を止めるための最初の一手です。方法はおおむね次の順番で検討します。
- プラットフォームへの直接報告:各SNS・掲示板の通報機能を利用する方法です。明らかな規約違反であれば対応してもらえることがあります。
- 弁護士名義での削除請求:直接の報告で削除されなかった場合、弁護士名義の書面で請求する方法です。
- 裁判所への申立て:任意の削除に応じてもらえない場合の手段です。
法的な仕組みとしては、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(旧プロバイダ責任制限法、通称:情報流通プラットフォーム対処法)3条が土台になっています。この条文では、プラットフォーム事業者が一定の要件を満たして送信防止措置を行った場合、発信者に対して原則として損害賠償責任を負わないと定められています。具体的には、被害を訴える人から侵害情報を示して削除の申出があったときに、事業者が発信者へ同意の有無を照会し、発信者が照会を受けた日から7日以内に同意しない旨の申出をしなければ、削除しても事業者は責任を問われません(同法3条2項2号)。この「7日ルール」が、多くのプラットフォームの削除対応フローの根拠になっています。
重要:削除だけでは、同じ投稿者が別のアカウントで同様の投稿を繰り返す可能性が残ります。再発防止や損害賠償を求めたい場合は、削除と並行して証拠保全を徹底し、次の発信者情報開示命令も検討してください。
主要プラットフォームの通報窓口
プラットフォームごとに通報の導線や運営元は異なります。まずはアプリ内の通報・報告機能を確認し、対応が難しい場合は次のセクションで解説する発信者情報開示命令を検討してください。運営元が海外法人であっても、日本国内で事業を行っており申立てが日本国内の業務に関するものであるときなど、一定の要件を満たせば日本の裁判所に発信者情報開示命令を申し立てられます(同法9条)。ただし具体的な進め方や必要書類はプラットフォームごとに異なります。プラットフォームごとの開示請求の詳しい進め方は、それぞれの専門記事にまとめています。
| プラットフォーム | 詳しい開示請求ガイド |
|---|---|
| X(旧Twitter) | Xの開示請求ガイド |
| Instagramの開示請求ガイド | |
| YouTube | YouTubeの開示請求ガイド |
| TikTok | TikTokの開示請求ガイド |
| Discord | Discordの開示請求ガイド |
| LINE(オープンチャット等) | LINEの開示請求ガイド |
| Googleマップの口コミ | Google口コミの開示請求ガイド |
| 5ちゃんねる | 5ちゃんねるの開示請求ガイド |
| 雑談たぬき | 雑談たぬきの開示請求ガイド |
| ホスラブ | ホスラブの開示請求ガイド |
| ガールズちゃんねる | ガールズちゃんねるの開示請求ガイド |
| 好き嫌い.com | 好き嫌い.comの開示請求ガイド |
発信者情報開示命令 投稿者を特定する
投稿を削除しただけでは、投稿者を特定できたわけではありません。再発防止や損害賠償を検討する場合は、発信者情報開示命令という制度を利用します。
開示を受けるための要件
特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律5条では、発信者情報の開示を請求できる要件として、主に次の2点を挙げています。
- 投稿の流通によって権利侵害が明らかであること
- 損害賠償請求権の行使など、開示を受けるべき正当な理由があること
2022年に新設された裁判所の手続き
2022年10月に施行された改正法で、発信者情報開示命令(同法8条)という裁判所の決定による手続きが新設されました。裁判所は、権利を侵害されたと主張する人の申立てにより、決定でプラットフォーム事業者などに発信者情報の開示を命じることができます。あわせて、経由プロバイダなど別の事業者を特定するための提供命令(15条)や、ログの消去を防ぐ消去禁止命令(16条)も定められており、以前はSNS運営者への仮処分と経由プロバイダへの別訴訟という2段階が必要になりがちだった手続きが、原則として1つの手続きの中で進められるよう整理されています。
投稿をしたSNS・サイトの運営者や、経由プロバイダなど通信に関わる事業者は、あわせて「開示関係役務提供者」と定義されています(同法2条11号)。投稿をしたSNS・サイトの運営者が氏名や住所そのものを保有していない場合でも、提供命令を使って経由プロバイダなど通信の経路にある別の事業者の情報を取得し、そこから発信者につながる情報の開示を求めていく、という流れになります。ログはプラットフォームや経由プロバイダ側の運用により一定期間で消去されることがあるため、証拠保全と早めの相談が重要になります(ログの保存期間の目安はプロバイダのログ保存期間の記事で解説しています)。
開示請求にかかる具体的な費用は開示請求の費用相場を、期間の目安は開示請求の期間を、認められやすいケースの傾向は開示請求の成功率をご覧ください。
損害賠償請求
投稿者が特定された後は、損害の回復を求めて損害賠償請求を検討できます。法的な根拠は民法709条(不法行為による損害賠償)と710条(財産以外の損害の賠償)です。709条は故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者に賠償責任を負わせる規定、710条は名誉などの財産以外の損害についても慰謝料として賠償の対象になることを定めています。
進め方は、投稿者との示談交渉から始め、合意に至らない場合は民事訴訟に進むのが一般的な流れです。認められる金額は投稿の内容、拡散の程度、被害の実態などによって個別に判断されるため、本記事では一律の金額を示していません。
刑事告訴 名誉毀損罪・侮辱罪
悪質なケースでは、加害者の刑事処罰を求めることもできます。主に問題になるのは次の2つの罪です。
| 罪名 | 条文 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 名誉毀損罪 | 刑法230条 | 3年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金 |
| 侮辱罪 | 刑法231条 | 1年以下の拘禁刑若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料 |
侮辱罪は、2022年の刑法改正(令和4年法律第67号、2022年7月7日施行)で法定刑が引き上げられました。改正前は拘留(30日未満の身柄拘束)または科料(1万円未満の金銭的制裁)しか定められていませんでしたが、改正後は拘禁刑や罰金も科されうる内容になっています。
重要:名誉毀損罪・侮辱罪はいずれも親告罪です(刑法232条)。被害者などから告訴がなければ検察官は起訴(公訴の提起)できません。告訴状の具体的な書き方や、警察に相談する際のポイントは、名誉毀損で刑事告訴する方法を解説した記事にまとめています。
公的な相談窓口一覧
弁護士に依頼する前に、まず無料で相談できる公的窓口を利用する方法もあります。「誰に相談すればいいか分からない」という段階でも、電話やWebフォームで気軽に利用できます。目的に応じて使い分けてください。
| 窓口 | 内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| みんなの人権110番(法務局) | 誹謗中傷を含む人権問題全般の相談。全国共通ダイヤルで、発信地に最も近い法務局につながる | 0570-003-110(平日8時30分から17時15分) |
| こどもの人権110番(法務局) | いじめや虐待など、未成年に関する人権問題の相談。電話のほかメール・LINE・手紙でも相談可能 | 0120-007-110(平日8時30分から17時15分) |
| 違法・有害情報相談センター(総務省委託事業) | 誹謗中傷の書き込みを削除する方法や、投稿者を特定する方法についてのアドバイス | 相談フォームからのオンライン受付(ihaho.jp) |
| 警察相談専用電話(警察庁) | 緊急を要しない生活の安全に関する相談。命に関わる緊急事態は110番 | #9110(平日を基本に、各都道府県警察の運用に従う) |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 弁護士・司法書士による無料法律相談、弁護士費用等の立替(収入・資産の要件あり) | houterasu.or.jp |
なお、インターネット・ホットラインセンター(internethotline.jp)は児童ポルノやわいせつ画像、自殺誘引情報など違法性の高い情報の通報窓口であり、公式サイトでも「相談機関ではないため相談には対応できない」と明記されています。個別の誹謗中傷の対応方法を相談したい場合は、上表の違法・有害情報相談センターや法務局の窓口を利用してください。
弁護士費用の考え方
日本弁護士連合会(日弁連)は、弁護士の報酬について「個々の弁護士がその基準を定めることになっており、標準小売価格というようなものはありません」と案内しています。かつて存在した全国一律の報酬基準は廃止されており、費用は依頼する事務所によって異なります。本記事で具体的な金額の相場を示さないのはこのためです。
弁護士費用には、主に次のような項目があります(内容は日弁連の説明に基づく名称で、金額は事務所ごとに設定されます)。
- 着手金:依頼時に支払う費用
- 報酬金:解決した結果に応じて支払う費用
- 法律相談料:相談そのものにかかる費用
- 実費:印紙代や交通費など
費用が心配なときに使える公的制度
収入や資産が一定の基準以下であれば、法テラスの無料法律相談(同一の問題につき3回まで、1回30分)や、弁護士費用等の立替を行う民事法律扶助を利用できる場合があります。収入は手取りの平均月収(賞与を含む)、資産は現金・預貯金で判定され、基準は家族の人数や居住地域によって異なります。2026年9月時点で法テラス公式サイトに掲載されている基準の一例は次のとおりです。
| 家族人数 | 収入基準(東京都特別区・大阪市等) | 収入基準(その他の地域) | 資産基準 |
|---|---|---|---|
| 1人 | 200,200円 | 182,000円 | 180万円以下 |
| 2人 | 276,100円 | 251,000円 | 250万円以下 |
| 3人 | 299,200円 | 272,000円 | 270万円以下 |
| 4人 | 328,900円 | 299,000円 | 300万円以下 |
同居家族が1名増えるごとに、収入基準は東京都特別区・大阪市等で33,000円、その他の地域で30,000円が加算されます。また、家賃や住宅ローン、医療費などを負担している場合は、一定の限度額まで収入から控除できる仕組みもあります。表の基準を超えていても対象になる可能性があるため、正確な該当可否は法テラスの公式サイトまたは相談窓口でご確認ください。
具体的な弁護士費用の内訳や事案別の目安は、開示請求の費用相場で詳しく解説しています。
予防策
完全に予防することは難しいものの、被害のリスクを減らす方法はあります。
| 対策 | 内容 |
|---|---|
| Googleアラートの設定 | 自分の名前や企業名、ブランド名を登録し、新しい言及を早期に把握する |
| エゴサーチの定期実施 | Google・SNS・口コミサイトなどで定期的に検索し、アラートで拾えない投稿も確認する |
| SNSプライバシー設定の見直し | 公開範囲の制限、DM制限、リプライ制限などを活用する |
| 二段階認証の設定 | 全アカウントに設定し、なりすましやアカウント乗っ取りを防ぐ |
| ワードミュート・ブロック機能の活用 | 特定のキーワードやアカウントを非表示にする |
| 口コミ・SNSの定期モニタリング | 企業・店舗はGoogleマップや口コミサイトを定期的に確認する |
| ソーシャルメディアポリシーの整備 | 企業として従業員のSNS利用方針を策定・周知する |
| パスワードの使い回しを避ける | アカウントごとに異なるパスワードを設定し、乗っ取りによるなりすまし投稿を防ぐ |
| 個人を特定できる情報の投稿を控える | 自宅や勤務先が分かる写真・位置情報など、攻撃の手がかりになる情報の公開を最小限にする |
出典・参考情報
- e-Gov法令検索「刑法」(第230条・第231条・第232条、法改正の沿革情報を含む)
- e-Gov法令検索「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」(第3条・第5条・第8条・第15条・第16条)
- e-Gov法令検索「民法」(第709条・第710条)
- 総務省委託事業「違法・有害情報相談センター」
- インターネット・ホットラインセンター(IHC)
- 法務省人権擁護局「みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)」
- 法務省人権擁護局「こどもの人権110番」
- 警察庁「ご意見、各種相談・情報提供等」(警察相談専用電話#9110)
- 警察庁「サイバー事案に関する相談窓口」
- 日本弁護士連合会「弁護士費用(報酬)とは」
- 法テラス「無料法律相談のご利用の流れ」(収入・資産基準)
弁護士費用は事務所により異なります。本記事の記載は上記の公式情報を基にした一般的な制度の説明であり、確実な金額や結果を保証するものではありません。正確な内容は依頼予定の弁護士や各公式窓口に直接ご確認ください。すべての出典は2026年9月16日に確認しています。
よくある質問(FAQ)
Q.ネット誹謗中傷の対策として、最初に何をすべきですか?
Q.誹謗中傷の投稿を削除してもらうにはどうすればいいですか?
Q.投稿者を特定するにはどうすればいいですか?
Q.誹謗中傷をした相手を刑事告訴することはできますか?
Q.弁護士に依頼すると費用はいくらかかりますか?
Q.誰にも言えず一人で悩んでいます。無料で相談できる窓口はありますか?
Q.誹謗中傷の被害を未然に防ぐ方法はありますか?
Q.学生(未成年)がネットいじめを受けた場合はどうすればいいですか?
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